ignis《種火》

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城の廊下の蝋燭が消えてゆく。 外が騒がしくても、ここは静寂の籠の中。蝋燭が消えて、訪れる更なる静寂の時間が芽生え、何者かを包んだ。 奏でる絶叫は、やがては最美の中に消える。 止まらせたくは無いのに、いつかは終わる命が消えてゆく。 灯した朧火に映る感情は何模様か。 彩る私は薄明かりに蕩ける。 嘘の美術が消えてく、炎が生まれて闇を照らして、私の美学が月の下で流れる。 絵画のように確かに、影法師のように虚ろに、存在を誇示する。 足下の屍、最期に美学を誇示された者達。その口は語らずとも、私の存在を物語ってくれる。 闇夜の見えない暗がりの廊下に光射し、罪と同じ色の虹を魅せた。最期は、美学で彩るに相応しい者には、極上の美を与える。 乱反射する想いの前線。そこに助けの言葉は届かない、愛する何かは次第に遠のいてゆく。 照らした痕跡に全て刻んでいこう。 その身が朽ちるまで。 極彩美学、幽韻之祝福。 「今日も喧しい戦の火……相変わらず……煩わしい」
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