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炎に包まれた赤い猫が一声鳴く。
淡く微かな、音の戦争の中では掻き消される儚さだった。
瞬間、猫が猛火を纏って人の形を描く。
やはりそこに現れるのはトーチ。美学の亡霊は恐竜の放つ暴力に斃れる事を良しとせず、巨大なランタンを下ろす。
「人であり人ならざる者がこの世で一番恐ろしいのでしょうか?」
トーチ自身なのか、それとも他の誰かなのか分からない独白を呟く。
ふと周囲を見渡せば紫炎の鴉が戦艦の砲身に止まり、赤い猫、蒼のトカゲ、緑の百足が猛火より出でていた。A-Rexは軽く舌打ちする。
「まるで……お前は幽霊屋敷のように不気味だな。」
そう、述べるしかこの光景は受け入れられなかった。
「お褒めに預かり光栄だ。」
もうA-Rexには目の前の亡霊が途轍も無く強大な悪魔にしか見えない。
「気味悪いと言ったんだがな!」
これは異常だ。
「そう言う貴方は野性的だな。」
こんな悪魔がいるのなら、南の大陸の侵攻にどれだけの被害が出ていただろう。
「それこそ褒め言葉だな!」
ここで何としても悪魔を殺さなければこの海戦は……
「美学が短絡的と云う意味だが……少し遠回し過ぎたか。」
敗北する。
「上等!!」
再び爆裂弾に切り替えた武器腕の弾丸を撒き散らしながらレックスが地響きを起こし、恐れを知らずに駆ける。その道は誰も邪魔することが出来ない王者の道なのだと主張する。
トーチが僕を従えて走る。
「我こそが放つはぁ! 爆裂のブラストオオオオオオォォォォォ!!」
勝利のために、AーRexが吠えた。
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