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同意の言葉を聞いたトーチは無言で消し飛ばされた大扉へと歩み寄り、手を翳す。どうやら扉を壊した後、基礎が崩れて瓦礫が積み重なってしまったようで唯一の出入口を塞いでしまっていた。故にどうにかしなければ大手を振っての脱出は出来ない。
盛火の熱を纏うトーチの手に重なるよう、淡い光が現れる。黄金色の燐光である。
限りなく刹那的で美しい花火が炸裂し、瓦礫の壁を吹き飛ばした。
「貴女達に幸あれ。」
自由なる世界の空が見えた。
二度と拝めないと思っていた空へと瞳を奪われて、長耳の女達は涙が浮かぶ。
「恩に着ます……傭兵様……。」
全てが弾け飛んだ晴天の空の下、青い炎のランタンを持つトーチへ注がれる感謝の集合。
それを背中で受けるトーチは振り向かない。
不可解な炎は気まぐれで、色々な色を燃やす。
そんな炎に感謝したって、すり抜けて燃えていくだけなのだから。必要ないのだから。トーチはその行動の原理を理解してはいるが、共感が出来ない。
故に……。
「さあ、早く進もう……夜が再び来る前に……。」
目を背くように流した。
トーチは先頭を照らす篝火となり、魔王の住まう城へと導く。
光に不吊りあいの黒を風に揺らせながら。
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