palatium glacies 《氷の宮》

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palatium glacies 《氷の宮》

大雪原の歌姫 北の国では常に歌に気をつけろとの戒めがある。歌が人の命を奪うのだそうだ。 大雪原の秘境には雪女が住まうとされ、探検者は常に氷漬けになって発見されている。 雪女を目撃した者の大半が氷漬けになって発見されているが、運良く生還した者は皆こう述べる。 「あまりの美しさに目を奪われていた」 生還者の八割が女性という結果から、被害者はその美しさに見惚れて追跡、または襲いかかり、逆に凍らされていると予測できる。 一度、大雪原を王国の旅団が横断しようとした際、誰一人として帰って来なかった事を記しておく。捜索隊も誰も帰ってこなかった。 その日は村に歌声が響いていたようで、雪女の仕業として今でも伝えられている。 それ以来、王国ではあの雪原にはローレライが住まうと噂されていた。 物好きな賞金稼ぎよ、気をつけたまえ。 あの雪女は静寂を求む。 あれを倒せば英雄になれるのだろうが、神でさえも凍らされて所有物にする様な女だ。 それでもなお行くというのか。 そうか、幸運を祈る。 やはり今回も帰ってこなかったか……。 おや、そこのお兄さん。その依頼書はお気をつけなさい。 ーとある酒場の会話より
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