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休みだからと、王都に置いてきたナズナが背後に立っている。
あたしは呆けた顔で彼を見つめた。
「書類。ベルファに渡せって、親父が寄越してきた。まぁ、シャルに会えるから二つ返事で受け取ってきたが」
「そう…」
ナズナは懐から数枚の紙を取り出すと、あたしの目の前でヒラヒラと振って見せた。
この世界には、通信手段が限られている。
早馬か、鳩に手紙をくくりつけて飛ばすか。
自分で持ってくるのは稀であるらしい、と聞いたことがある。
「で、欲しいのか?」
「あ、いやぁ…」
もう一度聞かれて、あたしは俯いた。
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