残夏

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「(どうしてこんな事になったんだ…)」 俺、安積陸は戸惑っていた。 全寮制という規則から寮に入ってはいるが、俺の実家はバスで30分と近い所にある。 そのせいで帰寮は他の生徒より遅く、始業式二日前だった。 ルームメイトであるソラが不在だったのは気になったが、どうせいつものように遊び相手の家にでも泊まっているのだろう程度ですぐ流した。 始業式では生徒会長の他に、寮長のソラの挨拶もある。 それまでに帰って来てくれれば問題はない。 帰って来なかったら副長の俺が代理でしなきゃならないから…そのときはソラを殴ろう。そう思った位だ。 流石に始業式前夜にも戻らなかったので多少焦りはしたけどね。 式にはちゃんと出席したし、朝帰りもいつもの事過ぎて突っ込む気にもならなかった。 問題なのは、帰寮後真っ先に聞いた話。 『ソラがとうとう恋人を作ったらしい』 何故か慌てるガクと泣き出しそうなルネが部屋に乗り込んできて、一頻り騒いでいった。 恋人という特定の相手を作らないあのソラが? 俄かには信じ難かったが、二人の喧騒から信憑性は高いんだろうと思う。 「ルネの聞き間違いかもしれないし、リク先輩ちょっと聞いてきて!」 何で俺が… 出しかけたその言葉を飲んだのは、ガクの目尻にうっすらと残った涙の跡を見付けてしまったからかも知れない。
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