異世界に来てしまった

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 どう考えても、その中にオレが関わる理由が分からない。 「実はの、地球とある世界が、破壊される寸前だったのじゃよ」 「ふうん、破壊ねぇ……って大事じゃねえかそれぇっ!?」  何をあっけらかんとカミングアウトしてやがる!  「まあ聞け。そこで、破壊を免れるためには、膨大な魔力が必要になるのじゃ」 「ま、まりょく? あ、あのさ、まりょくって、あれか? 魔法使いの力の……あれか?」 「その魔力じゃ」 「……ますます分からねえ。オレは魔法使いでも何でもない普通の高校生だぞ」  歳は十六歳。  黒髪黒目で、身長百七十二センチ、体重五十四キロの平凡な体。  決してイケメンではないが、不細工でもない、額の黒子がチャーミングな至って普通の男の子だ。 「そりゃそうじゃろ。地球では魔力は必要ないからの。体内に封じられとるだけじゃ」 「……マジか?」 「マジじゃ。然(しか)るべき世界に行けば、主の力は覚醒するじゃろうの」  な、何だその厨二病的な展開は……?  残念ながらアニメや漫画は好きだが、病を持つところまで進んだ記憶は無いぞ?  「お主の持つ魔力は膨大じゃ。たった一人で世界崩壊を防げるほどのものじゃ」  トビラは闘悟を探し出して、その然るべき世界へ飛ばした。  そして、本人は気づいていないが、封印されていた魔力が徐々に開放されつつあったところ、トビラにこの狭間(はざま)という所に連れて来られたわけだ。 「どうじゃ? 体が怠(だる)くはないか?」 「そ、そういや、ちょっと気怠(けだる)いかな? ほんのちょっとだけど」 「やれやれ、世界崩壊を防ぐほどの魔力を頂いた後だというのに、ちょっと気怠い程度とは……この規格外め」 「そんな人外を呼ぶような感じで言わないでくれるかな!」  まったく、オレはれっきとした人間だぞ。
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