第8章~もう連絡してこんといて……

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「やり捨てされた女」 平原は俺に合わせてかき捨てと言うことなく、重々しい間を作り、続けた。 「路地裏で、その芸人が見てる前でガソリン頭からかぶってな」 「えっ!」と俺は驚愕の声が自然に出た。 「火だるまや」と言う平原の右目の淵がピクリと動く。 「マジで……」 俺はそう呟いた。それ以外、相応しい言葉が見つからなかった。 「火だるまになった女」 平原が言った。 「幸い命はとりとめた」 「あ、そうなん。それはそれは」 俺は発する言葉が纏まらないまま、言う。 「お悔やみ、いや、ごしゅうしょう」 「問題はな」 言葉迷子になった俺を助けるように平原が話を再開した。 「火だるまになった女を間近で見た芸人や。そんなショッキングなシーン見てもて、その後の人生、人を笑わすような事できると思うか。前田、おんなじ状況に合ったとして、お前は出来るか?」  俺は早い動作で首を横に振る。  平原が顎を浅く引き、言葉を続けた。 「暴走したファンなんちゅうのは、何するかわからん。こんな事例はごく稀なんやろうけど、いつでも気をつけとくに越したことはない。特に、男トイレで待ち伏せするような狂った女相手の場合は」
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