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俺の背筋に冷たい物が走る。背骨をなぞるように、二往復、三往復、と。
頭の中で火だるまになった上ノ段姉妹を想像する。皮膚は焼け落ち、白骨となった二人が藤川に絡みつく。藤川が体を捩る。上ノ段の白骨がバラバラと崩れ落ちる。ドクロが浮遊し、藤川の頬に噛みつく。
こないだ大阪城公園で叫んだ言葉を平原に向いて、言ってみる。
「ホラーやがな!」と。
店の横引きタイプのドアがスライドしたのは、その時だった。俺は何故だか、上ノ段姉妹が入ってくるような気がし、身構えた。入ってきた人間の顔を確認する。当然ながら、入ってきたのは上ノ段姉妹ではない。俺も知っている男女二人だった。
「お、ターチン居るやんけ」
入ってきた男が俺の中学時代のアダ名を呼ぶ。男はふわりとした茶髪で、肌は色白く、シベリアンハスキーのような鋭い目(今は泥酔してトロンとした目)をしている。彼は同級生の織田龍だ。
「わぁ、ホンマや。ターチンだ」小柄で細い目をした女性が俺を指差す。彼女の笑顔は何とも言えないくらいに、良い。彼女も同級生、小澤奈津美だ。
「こんな夜中に二人で酔っぱらって」
俺は揺れながら、言う。
「何々ぃ、二人、付き合うとんちゃうん」
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