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藤川と喧嘩になった。明確な理由は忘れたが、藤川が俺に「お前、俺の言う事いちいち否定する癖ついてないか!」と喚き、俺が藤川に「ネタの本筋作っとんのは俺やろ! 文句あんねやったら、ネタの起動から、手直しまで1人で出来るようになってみいや」と答えた後、掴み合いになった。
いつもネタ合わせ(本域の立ち稽古)をする時に訪れる、山の一部を削りとったような空き地。いつもと変わらず、大きな木が一本、横向きに倒れている。まるでこの場所の主のように。
藤川の腰辺りを思いきり蹴った。藤川が狂ったように腕を振り回し、俺に迫る。その腕が俺のこめかみに当たり、俺の苛立ちが増幅する。
俺のパンチが藤川の頬に一発、藤川の蹴りが俺の右肩に、藤川のパンチが俺の右頬にそれぞれヒットした所で俺達は地面に尻を着け、動かなくなった。
明日は『paceこしもと』で、でんでんむしにとって初のウィナーズサークルの舞台がある。そんな中、やってしまった、コンビ間の暴力でのやり取り。不毛だ。あきれてしまう程に。
藤川は血が滲む口元を押さえ、夜空を見上げる。未熟で愚かな若きお笑いコンビを咎めるように、満天の星が輝く。
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