第1章~2000年2月。『paceこしもと』から、こんにちわ。

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 俺の眼前、地下の劇場に繋がる、黄色を基調とした可愛らしいアーチには『paceこしもと』と愛嬌抜群の丸文字が踊る。アーチの前には、黄色いポールが2本立っていて、これまた黄色のチェーンが張ってある。まだ入ってはいけない、という事だろう。 『paceこしもと』が入る、『コ』の字形のビル『HAHAHA越本ビル』周辺広場にはきゃぴきゃぴとした女達があちらこちらに見受けられた。  そして、ぎらぎらとした空気を纏う連中が、ざっと見て、200人を超えるくらい居る。屈伸運動をしたり、近くの奴と談笑したり、奴らは、今か今かと夢に繋がるドリームチケットを取得しようと、虎視眈々の様相だ。 「いっぱい居るなぁ」俺の左隣で相方の藤川が首を巡らせて呟く。長身なので、餌を求めるキリンみたいだ。 「なぁ前田、これって、みんな『ウィナーズサークル』のエントリー希望者なんかなぁ」 「みんな、って事はないやろ」 俺は答える。 「まぁ、あれや。芸人率高いやろうけどな」
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