第1章~2000年2月。『paceこしもと』から、こんにちわ。

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 藤川が整った顔に不安げな色を浮かべた。 「こんなにいっぱい居る中、ちゃんとエントリーできるやろか……俺ら」 「ネガティブシンキング!」と、俺は藤川に右手人差し指を向けた。 「ホンマにお前は治らんなぁ。ネガティブ病。KGS卒業を期に治ったもんやとばかり思っとったのに」  藤川は無言で唇を尖らせた。  俺達はお笑いコンビ『でんでんむし』  一週間前に、越本興業の養成所『越本芸能学院』(通称KGS)を卒業したばかり。俺前田、相方藤川共に20歳(あと数ヶ月で21歳)になる超若手お笑いコンビだ。  KGSの卒業公演、初舞台を踏んだあの日から一週間後、2月の第4土曜日。最近は寒さもいくらか和らいで、今日みたいに晴れた昼間なら、暖かい。俺はロンTにパーカーを羽織るといった服装。藤川は黒のTシャツとボーダー袖のロンTを重ねて着ている。春はもうすぐだ。 「でもさ」と口を開く藤川は相変わらず、きょろきょろしている。相当空腹のキリンさん。 「『ウィナーズサークル』ってどうやって出場者決めんねやろ」
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