第1章~2000年2月。『paceこしもと』から、こんにちわ。

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 ウィナーズサークルとは『paceこしもと』で毎月第1~第3土曜日に開催されている若手芸人を対象とした、オーディションイベントだ。俺と藤川は今日、それのエントリーにやってきた。 「ここに」俺は言う。「ここに居る奴ら全員でシバキ合いして、最後まで残った奴が」「なんでやねん!」  藤川がすかさずツッコミを入れてくる。口が自然に反応した、そんな感じだ。俺がボケて、藤川がツッコむ。1年間、養成所で鍛え上げた、俺達のお笑い筋肉は、脈動し、進化し続けている。 「シバキ合いなわけないやろ! 競技変わってもとるやん!」 藤川が言った所で、俺はハッとした。右斜め前から、視線を感じた。広場の中心辺りに、サイコロ形の大理石がある。そこに腰掛けている3人組のギャルがクレープをかじりながら、こっちを見ていた。
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