棘の鎧を纏う薔薇

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こんな特徴のない顔の中で、大人になり、化粧をすることによって、唯一の特徴として浮上したのが目だ。 切れ長なその形に沿ってラインを引けば、キツくて冷たい印象の女の出来上がり。 リキッドタイプなど使おうものなら、キツくて冷たい、プラス、某歌舞伎役者ばりの強烈な目力も加わるらしい。 こちらはチラリと見ただけのつもりでも、相手はギロリと睨まれたように見えるそうだ。 ……こんな特徴、要らない。 だから、普段のアイメイクにラインは引かない。 シャドーと、使ってもペンシルタイプをぼかす程度で抑えている。 マスカラも極力使わない。 ましてや盛るタイプとか、つけ睫毛なんて、私にとっては禁断のアイテムだ。 某歌劇団の舞台メイクになってしまう。 一般人の、しかも普通の会社員の私が、歌舞伎役者や舞台女優になるわけにはいかない。 この迷惑な特徴を如何にして殺し、少しでも優しく、柔らかい印象を与える目元に仕上げるかが重要なポイントになる。 素っぴんで過ごせるならそれに越したことはないが、お客様と接する上で、化粧も身だしなみの1つ、社会人としてのマナーだ。 しないわけにはいかない。
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