棘の鎧を纏う薔薇

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……マズい…、 こんなところで思い出すんじゃなかった…、 電車酔いも手伝ってか、本当に息が苦しくなってきた。 手も冷たくなってきている…。 久々に……、マズい………… こんな時は、先生の言葉を呪文のように、心の中で繰り返す……… 『落ち着いて、瑠華…』 『君は悪くないんだ…』 『ゆっくり息を吐いて…』 ……先生、大丈夫、 落ち着いてきたよ…。 『自分の容姿を受け入れなければいけないよ…』 ……受け入れたよ、先生…、 見た目通りの、勝ち気で、豪胆で、恋にクールな大人の女を演じているよ…。 『綺麗な花のままでは、簡単に手折られてしまう。だから、少しの棘を纏いなさい…』 ……それも大丈夫、 見た目とは真逆の、内気で、臆病で、恋にヘタレな本当の自分を守れるように、棘の鎧を纏っているよ…。 あんなに辛い思いは、二度としたくない。 恋することが、怖い。 だから誰も好きにならない。 なってはいけない…。
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