棘の鎧を纏う薔薇

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通勤・通学でごったがえす駅のホーム。 3mほど離れた右やや後方、こってりメイクを施した5~6人の女子高生逹が、あからさまにこちらを指差し、駅の喧騒に負けじと大声で話す。 「デカっ!」   ……私のこと…かな… 「ヒールの分引いても、175はあるんじゃね?」   ……やっぱり私のことか…   ……てか、174.8cmだし!   ……2mmの差はデカいし! 「足ながっ」   ……パンツ選び四苦八苦だよ 「モデルかなぁ?」   ……ハズレ   ……身内にいるけどね… 素知らぬ顔で電車待ちをしている人達も、その話題の対象となる人物を探し、チラチラとこちらを窺っているのがわかる。 ただでさえ目立つのに、彼女達の大声とともに、今日のスーツに合わせて履いてきてしまった、ヒール高7cmのパンプスを呪ってしまう。 確かに今日の私は総身長181.8cm、女にしてはデカい方だ、…いや、デカいです、ハイ…。 でも一番の失敗は、ヒール高よりも、それを中高生の通学の時間帯に履いてきてしまったことだ。 社会人や大学生とかなら、たとえ思ったとしても、大声で指摘したりはしないから…。 はぁぁぁ…。 完璧ミスった。
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