棘の鎧を纏う薔薇

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伸びてしまった身長を縮める魔法の薬などない。 もう27歳だし、いい加減気にしないで、好きな靴を履こうと決めたのに…、 ……決意も揺らぐわ。 彼女達の中で、リーダー的なポジションにいると思われる娘が得意気に話す。 「モデルじゃないって。どう見たって普通の会社員の服装でしょ」 チャコールグレーのストライプ柄パンツスーツ。 インナーはちょっとラフに、少し光沢がある素材のオフホワイトTシャツ。 大きめの黒のショルダーバッグ。 そして…、 ヒール高7cmの黒のパンプス。 お客様との急な打ち合わせにも対応できるように、基本スーツか、ジャケットが必需品。 得意気に話すまでもない、 どこからどう見ても、この上なく普通の会社員スタイルだ。 …と、背の低い娘が、しゃがんだり、背伸びしたり、少し近づいて来たり、何やら忙しなく動き出した。 「見えなぁい」 おそらく顔の確認をしたいのであろうが、視界に入るチョロチョロとしたその動きは、正直ウザい。
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