棘の鎧を纏う薔薇

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小顔で卵型。 細すぎず太すぎず、バランスの取れた眉。 二重で切れ長、つり目がちの少し大きな目。 高すぎず低すぎず、スッと通った鼻筋と、小さめの小鼻。 上唇より下唇の方がやや厚めの、標準サイズの口。 全てのパーツが左右対称に、バランス良く配置されたこの顔を、美形だ、羨ましい、と言う人が多いのは事実だ。 でも幼い頃から内向的な性格の私にとっては、進みたい方向への妨げになることはあってもプラスになったことはただの一度もない、厄介な顔でしかない。 過去に一度だけ、自惚れそうになったことがあった。 それは小学3年生、図画工作の時間に人物画の授業があった時。 モデルになるのはクラスから3人、その中から好きな1人を選び、顔を描いてみましょう、というものだった。 当時から『可愛い』ではなく『美人』と言われていた私は、一番人気のモデルになった。 悪い気はしなかった…、 私の周りにだけ人がたくさん集まってる…。 積極的にクラスの輪の中に入れず、休み時間は1人で過ごすことが多かった内気な私にとって、その状況は単純に嬉しかった。
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