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「イザークっ…?」
しばらく状況が飲み込めず黙ってたが、頬を拭ったのはイザークの唇で…
俺は我に返るなり彼の名を叫んでしまった。
「なんだ?」
平然とした口調で返される言葉…
相手は何とも思っていないのだろうか…
「涙…止まったな……」
あいての言葉に手を頬に当てると、確かに涙は止まっていて、流れた道筋がヒヤリと冷たかった。
イザークが拭ったところ以外は…
「本当だ…」
彼は泣いている自分をあやしていた…まるで子供をなだめるように…
そう思うとまたチクリと胸が痛んだ…
カレハベツニオレノコトヲ
スキナワケジャナイ……
そう思えるような行為だった…
ショックよりもやっぱりという気持ちが強く、俺は顔を上げられなかった。
「おまえに泣かれると困る…完璧で…冷静で…容姿端麗で…人がよくて誰からも憧れられる…そんな貴様に追いつきたかった…」
イザークの思いがけない言葉に一瞬耳を疑った。
完璧?俺が?違うっ…今だってイザークの一言でこんなにも泣きそうになる俺が、完璧なわけない…
「好きな奴より上に行きたい…俺は貴様より偉くなる…おまえを守れるように…アスラン・ザラ」
そう言って俺の頬に触れた手は少し振るえていて、必死になってくれたのかと思ったら嬉しくて…
俺はまた泣いた…
夢じゃないと流す涙で確認しようやく顔を上げると、まぶしいくらいの銀髪が目に入る
けれど、その持ち主は今まで見たことのないような優しい顔で笑っていた…
俺に向けられた最初の笑顔…
「やっと名前…呼んでくれた…」
涙を拭いつられて笑うと銀髪は少し横を向き…
「恥ずかしいんだよ」
と呟いた…
俺はこの日を一生忘れない…
今日僕らは恋人になった…………
~fin~
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