第1章 疑問

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「誰そ(たそかれ)?」と、 ()きたくなるほど、 あたりが薄暗くなってきた頃、 ふと、下を見ると地面に、 『28番地は向こう』だ、 と示すような数字と矢印が、 チョークのような白い文字で 浮かび上がっていた。 [28→] 細い路地を矢印に導かれるように歩いていくと、ビルに挟まれた行き止まりの場所にたどり着いた。 行き止まりの1メートルほど手前に、 やはり『28』と 右のビルのドアを指し示す矢印と、 『29』と左のビルのドアを指し示す矢印、 そして、探していた『30』と その場所を示す矢印が 行き止まりを目がけて 真っ直ぐ前に伸びていた。     ↑     30  29←   →28 俺は、頭が混乱した。 行き止まりに向かって進めと言う事なのか? しばらく自問した後、取り敢えず、そこに向かって歩いてみる事にした。 あと数歩で壁というところで、何気なく下を見ると、何故か、壁と地面の境界辺りが、揺れているように見えた。 俺は思い切ってその境界を(また)いでみた。 跨げるハズのないその境界を…。 第2章に続く
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