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「おはよー☆」 鈴を転がすような声が聞こえてプーチンは振り返った。 仕事場を出て直ぐの所にその声に相応しい姿をした可憐な少女が微笑んでいた。 「おはよう、コマネチ。」 「ちょっと!」 コマネチと呼ばれたその子はぷくっと頬を膨らませ、プーチンを睨む。 プーチンは一瞬キョトンとした後にへらりと笑い「ごめんね」と言った。 「今日はどうしたの?こま…じゃない、キャシー。」 コマネチ、と言いかけて、プーチンは再びきつく睨まれ名前を呼び直した。 それに気分を良くしたのか長い金髪をサラッとかき揚げ、誰もが振り向く極上の笑顔でにっこり微笑むその子はキャサリンと周りに呼ばせていた。 愛称キャシー、本名コマネチ。 所謂、男の娘だ。 「今日はね、プーチンとお茶しようかと思ってw」 「僕と?レニーと行けばいいのに。」 レニー、という名前を出した途端、コマネチは顔を真っ赤にして、ブンブンと顔を振った。 「無理無理!レニーが二人でお茶してくれるわけないもん!」 レニー、とは、レニングラードのことで、プーチンの家の隣に住む20歳の青年だ。 コマネチが想いを寄せている相手だったりする。 いつもは小悪魔的な性格で、言い寄ってくる男には甘えて貢がして挙げ句の果てに足蹴にしたりしているコマネチだが、本気の恋愛は初めてらしく(まあ14歳だし)名前を出しただけでこの様だ。 普段とのギャップに驚きつつ、コマネチを可愛らしい所もあるんだなぁと微笑ましく見詰めるプーチンだった。 ―――…… 「もう~、調子狂うし!」 「あはは、ごめんごめん。」 二人は車で一時間ほど走り、この地域で一番賑やかな街へ来ていた。 コマネチお気に入りのカフェは外装も内装も女子が好みそうな可愛らしいもので、店頭に飾られた花は店屋が開けそうなほど多く、どれも手入れが行き届いている。 プーチン一人ではとても入れない雰囲気のその店で、プーチンとコマネチは珈琲を飲みながら他愛もない話を小一時間程していた。 (……コマネチと二人っていうのも怪しいけどね。) 中身は男と言っても、キャシーの見た目は華奢で可憐な女の子。 一方自分は普段着でもっさいおじさん。 道行く人はこの組み合わせを不思議そうな顔で見ていた。 クスクス笑ったり、眉間に皺を寄せる人なんかは多分、援交だと思っているに違いない。 プーチンは何だか背中が痒くなってきた気がした。
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