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そろそろ出ようかとプーチンが声を掛けようとした時、コマネチがそういえばと窓の外に目をやった。
「ここってさぁ、領主様のお膝元だったっけ?」
「うん、確かそうだよ。」
「ふ~ん、そっかぁ。」
何か考える素振りでコマネチは珈琲と一緒に頼んでいたケーキの最後の一切れを口に放り込んだ。
プーチンは小首を傾げて「それがどうしたの」とコマネチを見詰めた。
「えー?うーん、えっとねぇ…」
たっぷりもったいぶったコマネチは「秘密だよ?」と一般男性なら間違いなく見惚れるであろう、ぷっくりと可愛らしいリップに人差し指を付ける動作をするとプーチンに手招きをした。
顔を近付け、内緒話をするようにコマネチがボソボソと呟く。
プーチンはその内容に目を見開き、思わず「えぇ!?」と大きな声を出してしまった。
他のカフェの客や店員がチラっと視線をこちらへ寄越すのがわかりプーチンは堪らず小さくなった。
「プーチン!静かに!」
「あ、うん、ごめんなさい。…でもそれ、ホント?」
「ホント。だって、そのお屋敷の人から聞いたんだもん。」
エヘンと得意気な顔をするコマネチが教えてくれたこと、それは衝撃的な内容だった。
――……近々、この地域の領主様が若い女子を一人 "選ぶ" らしい。
他の領地であれば、これはただ単に領主が結婚を考えていることが多いが…プーチン達が住むこの地域では意味が全く違うのだ。
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