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「……苦しいんだ」
胸が。
キュッと胸の前で握った手のひらを、儚げに見つめるソイツに、
走った胸の痛みは、気付いていない、フリをした。
「……は、まるで恋でもしたみたいな言い方だな。精神患者」
「………うん、そう…みたいだ」
「…………………」
意外にもあっさりと肯定されたことに、頭が真っ白になった。
ほんのりと頬を染め、まるで乙女のように想いを語る、ソイツ。
ボーッと聞き流すフリをしつつ、どうしても耳に入ってくる、ソイツの至福そうな弾む声色に、ズキズキと胸が痛む。
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