2人が本棚に入れています
本棚に追加
カビはあまりの事に狼狽した。
あいつは何者だ。
いきなり現れ、人の夢をぶち壊しにしてきた。
現実世界で合った記憶はない。まして印象に残りもしない。
夢はカビの内側を映し出す空間。
内部に存在しない物は決して場にのうのう現れはしない。
あいつは一体何処から湧いてきたのか。
カビは背筋に冷たいものを感じ、一刻も早く夢から逃げようと、一度だけ思った。
だが、実行には至らなかった。
ここは俺の世界だ。死にはしないし何でも出来る。
車を弾き飛ばしたからどうした。俺にもそれくらいは可能だ。
ここの支配者は、俺だ。
カビはそう思考し、夢に留まる。
意地だった。
少女程度に心を惑わされる自分を振り払おうとしたのだった。
カビは戦車の走り去った方向へと足を向けた。
道はキャタピラで破壊され、歩きにくくなっているだろう。
構うものか。
カビは少女を追いかけるつもりで道を歩んでいった。
最初のコメントを投稿しよう!