ゆめゆめ

10/17
前へ
/17ページ
次へ
カビはあまりの事に狼狽した。 あいつは何者だ。 いきなり現れ、人の夢をぶち壊しにしてきた。 現実世界で合った記憶はない。まして印象に残りもしない。 夢はカビの内側を映し出す空間。 内部に存在しない物は決して場にのうのう現れはしない。 あいつは一体何処から湧いてきたのか。 カビは背筋に冷たいものを感じ、一刻も早く夢から逃げようと、一度だけ思った。 だが、実行には至らなかった。 ここは俺の世界だ。死にはしないし何でも出来る。 車を弾き飛ばしたからどうした。俺にもそれくらいは可能だ。 ここの支配者は、俺だ。 カビはそう思考し、夢に留まる。 意地だった。 少女程度に心を惑わされる自分を振り払おうとしたのだった。 カビは戦車の走り去った方向へと足を向けた。 道はキャタピラで破壊され、歩きにくくなっているだろう。 構うものか。 カビは少女を追いかけるつもりで道を歩んでいった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加