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これだけの事態でも、カビは無傷を保っている。
悪魔的な笑みをたたえ、煙を掻き分けながらカビは現れた。
少女へと歩み寄る。
おかっぱの少女は、カビの姿を見るなり頭を下げた。
「ごめんなさい!」
カビは足を止めた。
「わたしが悪かったです許してくださいどんな事でもしますからお願いしまーす。」
少女は体を直角に曲げたまま、棒読みですらすらと口走った。
そして、再び頭を持ち上げ、謝罪の欠片もない無表情をカビへと差し向ける。
「あなたが期待しているであろう言葉を口先だけでいいかげんに放言してみたわ。どう?」
カビは毒気を抜かれかけた。
こいつ、夢の癖に。
こいつ、手下の分際で。
何一つ従わない。
少女は続ける。
「あなたは歪んでいる。思った通りのくだらない人間。」
少女は臆す事なく言い放つのだ。
「酌量の余地は無しよ。あなたは落第。誰も救わないし、そもそも救えない。」
カビは少女に飛び掛かった。
喉を締め上げようと手を伸ばす。
「無駄。」
少女は消え、カビは堅い道に激突した。
意識が薄れていく。
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