ゆめゆめ

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カビは夢の世界をさ迷った。 いや、進行形だ。 さ迷っている。 当てもなく歩き回っている。 何がしたい訳でもない。 だが何もしない訳にもいかない。 カビは歩いていくのである。 正面で、こけしと腹話術人形が話し合っていた。 こけしは甲高い声で言う。 「モアイの像より頭の大きい汝はいかにして活動せしめているのかご教授願いたい。」 腹話術人形は言い返す。 「諸君らは我の崇高かつ高尚なる技能知能才能全能に嫉妬恨みつらみを抱いておるものと我は推察しているのである。」 妙に難しい単語をぺらぺらと口から発する。 流石は腹話術人形。 カビは言い争いを眺めていた。 「世に言う驕り高ぶる俗人という人種に値するのではないか。」 「我に勝る点が汝に存在し教示出来得るのか否か。」 「汝は、汝は」 こけしの口調は次第に吃りが混じってきた。 口がないからか。 腹話術人形はひゃらひゃらと顎を鳴らしながらまくし立てる。 「汝、厩舎より出でし馬糞の塊の如し。理念はうねり酷なる理論を理不尽に流出させる偽わりのリアリストなり。」 ひゃらひゃらひゃらひゃら。 「汝はデクの棒と化し永久に浮腫を曝し続ける運命を認識し、それに準拠すべし。」 ひゃらひゃらひゃらひゃら。 「汝は、」 こけしは人形に体当たりした。 その瞬間、こけしは憤怒にまみれていたように見えた。 だがカビが呆気に取られている間に、こけしは爆ぜ、木っ端となって消え失せてしまった。
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