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どの道ただの夢。
ただの幻想。
そう理解していたはずだったが、少女の見せた嫌悪とそれに続く消滅は、カビの心の奥深くに重い傷を与えた。
仲良くなりたかった。
それが叶わぬなら、せめて話し相手にはなってほしかった。
今更苦しんでも後の祭り。
そうではあるが、やりきれない。
カビはとぼとぼと力無く歩いた。
道のようで道でない道を、ただ気の向くままに歩いた。
何か慰めを。
何か救いを求めて。
カビは歩いた。
するとそのうち、雑草の群れが現れた。
群れと称するに相応しい数。
多過ぎず、少な過ぎない。
雑草は声を出した。
「ふるりふるりへりへりへり。」
意味などない。
雑草は声を出したかった。
だから出した。
それだけの事。
「ほひいほひいほ。」
「へんへへへへ。」
「ひるるるうひるうひるひる。」
心持ち、は行が多いようだ。
カビは苛立ちを覚え、ひとつをむしり取った。
雑草は大声を上げ、許しを乞う。
「はひへへはひへへ!」
カビがそれで容赦をかける事態もあるはずがなく。
カビの破壊衝動は促進され、雑草を自身の赴くままに次々と引っこ抜き始めた。
悲鳴の大合唱。
「ひひはふはひひょ!」
「ほほははひえ!」
「はふへへふへ!」
カビはその声をむしろ心地好く体で受け止めながら、乱暴かつ丁寧に作業を続けた。
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