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運の悪い雑草共は、瞬く間に狩り尽くされた。
跡ひとつ残さず、まっさらな道に戻った。
カビは満足げに鼻息を吹く。
ストレス解消。
再び目的のない散歩を開始した。
歩いていく。
ふと背後を見ると、何か細長い物体がカビを追いかけてきた。
白い棒。
カビはそれがタバコであることに気付く。
タバコは擦り寄ってきた。
「私を買いなさい。」
頭を熱く燃やしながら、身をくねらせている。
「私を触りなさい。口づけをしなさい。吸いなさい。そして虜になりなさい。」
タバコは自己主張をやめない。
有毒な煙を散らしながら、カビをひたすら誘惑する。
カビの内心は再度荒れ始めた。
追い払いたい。
追い払わねば。
カビは道の傍らにぽつんと置かれていた灰皿を掴む。
高慢で高飛車で高望みな毒物め。
お前の中身は高が知れている。
カビは怒りに任せ、タバコの火に灰皿を叩きつけた。
タバコはひん曲がり、ぐにゃりとして道端に倒れ、二度と起き上がってはこなかった。
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