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カビは立腹していた。
自分の夢に腹を立てる男は一般に珍しいものだろうが、事実彼の口は、への字に曲折していた。
その癖未だに期待しているのだ。
楽しい夢を。
男は広場に出た。
サイケデリックで不確かな物体があちらこちらに配置され、前衛的な公園のような様相である。
よく見ると、それらの周囲に淡い色をした塊が纏わり付いているのがわかる。
スライムという単語が真っ先に彼の脳内に出現した。
正に的確。それらはスライムであった。
異様な建造物に群がる異様な物。
これぞ異様な光景、などとカビは思いかけたが、よくよく考えてみれば、夢にまともな光景などありはしないのである。
これは正常。
サイケもスライムも正常。
当たり前なのだ。
その途端それらは消滅した。
所詮これらはカビの夢の産物。
カビが興味を失えば、それでその物の命は終わるのだ。
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