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カビは道に戻る。
もう公園には用がない。
道では何台もの自動車が跋扈していた。
いつの間にやら選挙らしき催し物が始まっていたのだ。
選挙のカーは叫びを放つ。
「どうか、どうか糞虫のクズに薄汚い一票をお願いします!」
カビのイメージによる。
「金が欲しいのです。国民の皆様から金をむしり取り、湯水のように無駄遣いしたいのです。税金を払ってください。私の為に。」
「ダムが建ちます。私が当選すればもれなくこの地がダムに変わります。雀の涙程度の金を渡しますので出ていってください。」
「我々は某国の犬としてその命令に従います!」
「私はこれに落ちたら無職になるのです。私に職をください!」
「私に権力が足りないのです!」
「私には夢がある。偉くなって弟を顎で使う夢が!」
汚らしい発言だらけの演説。
全てカビの、選挙に対する印象に由来するのだが。
その時、異変が起きた。
「カビ野郎、カビ野郎に清き一票をぶち込んでくださーい!」
戦車を乗り回して現れた、制服姿のおかっぱ少女。
ほんの少し以前、カビを罵倒して消えた少女。
それが戦車で暴走し、選挙車にぶつかり跳ね飛ばしていく。
吹き飛んだ車は爆発、炎上して道から外れる。
誰も彼女を止める者はいない。
カビが腰を抜かしている隙に、その無骨な戦車は彼方へと遠ざかっていった。
演説は聞こえてこない。
何一つない静寂。
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