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(病って、何のことだろうか…。)
少女が言い残した言葉を、心の中で復唱しながら家に入り、電気を点けた知宏に突然、激しい頭痛が襲いかかった。
「うッ…!?」
それはあまりにも突然で、何が起きたか考える余裕はなかった。しかし、このままでは危険だと、身体が、本能が訴えていた。知宏は膝をつき、傍らの鞄から携帯電話を取り出そうとするが、痛みと焦りでなかなか見付からなかった。鞄をひっくり返してみるが、携帯電話は出て来なかった。歌穂の店に忘れて来たのだ。
どうしようもない不安、得体の知れない恐怖、負の感情ばかり芽生えさせるこの痛みから、どうにか逃れる方法を、知宏は必死に考えた。
「ぐ…あ…と、隣の部屋…。」
知宏は、自分の部屋の隣に大家が住んでいる事を思い出した。立ち上がる事もままならない知宏は、床に這いつくばって隣の部屋のドアを叩いた。
時刻は深夜1時に近い。こんな時間にドアを叩かれたら、誰だって警戒する。当然大家も、ドア越し誰か問うが、知宏は今、応えられるような状況ではなく、ドアを叩く事が精一杯だった。
(助けてくれ…!)
「本当に、こんな時間に誰だ…。」
大家はチェーンを掛けた状態のドアを開け、外の様子を伺った。自分より上に目線を送り、どんどん目線を下げていくと、倒れこんでいる知宏を発見した。
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