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夕食の用意をしているうちに9時になった。
そろそろ山越が帰ってくる時間だ。
優はそわそわしながら玄関が開くのを待った。
椅子に座り玄関の方を見つめる。
いっこうに開かない。
スマートフォンの時計が9時20分を表示する。
『…今日も来ていいかな?』
そう言ったはずなのに…。
せっかく暖め直したパスタがまた冷めていく。
そわそわした気持ちから切なくなってきた。
「なんだよ…」
そう呟いた時、
ピンポーン…。
チャイムが鳴った。
優は椅子から立ち、小走りで玄関に向かった。
「遅い!」
そう憎まれ口を叩いてドアを開いた。
「ただいま…。って普通お帰りって行ってくれるんじゃないの~?」
山越がいつもの情けない顔で立っていた。
その顔を見た時、なぜだか気が緩んだような、安心したようなふっと軽くなるような気がして優は慌てて背を向けた。
「お邪魔しまーす」と山越が自分の家にあがるのを何となく意識してしまって恥ずかしいようなそわそわしてしまう。
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