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いつもだったら、「からかわないでくださいよ」とあしらえるのに今は山越の言葉がいちいち胸に響く。
「連日の売り出しで疲れましたよね…。今風呂の用意をしてきますね」
優はリビングを離れた。
給湯のボタンを押し、バスタオルの中で一番綺麗なのを選んで山越が使えるように用意した。
(どうかしている…。)
好きだと告白されて、気持ちに答えられないと思っている相手を家にあげてこうして泊まらせるなんて。
(軽い奴だと思われているかも…。)
そう思われるのは嫌だと思った。
店長の山越にはそんな風に思われたくない。
高校のアルバイトの店長に山越を紹介されてから、期待に添えるように、バイトの店長に泥を塗らないようにと甘えないようにしてきた。
まさか私生活で山越を巻き込むことになるとは思いもしなかった。
優はなんとも言えぬ複雑な気持ちでキッチンに戻った。
当の本人は呑気にまだ柿ピーを食べている。
「あっ着替えとかは心配しないでいいよ~。ちゃんと持ってきたから」
「あぁ…。忘れてました」
優は気が抜けてそんなこと、と言うような口調で呟いた。
その後はテレビをつけ、ラグに座りながら、バラエティー番組を見ながら風呂がわくのを待った。
「ねぇ優くん…」
ワインを飲み終わり、冷蔵庫に冷やしてあったビールを山越に手渡す。
「なんですか?」
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