それでも愛してる。

155/158
前へ
/161ページ
次へ
数日が過ぎた。 スーパーで由希に会ってからまだ顔を見ない。 月曜日の花市場へはあれから山越と買い付けに行くようになり、必然と前日は優のアパートに泊まるようになった。 だがそれ以上のことはない。 あれ以来山越が自分に好きだとも言わない。 浩一とも会わなくなり、このまま何も無かったことのように、忘れていくんじゃないかと思った。 「優くんそろそろ閉めようか~」 特価のミニブーケも完売しちょうど閉めるにいい時間になった。 「わかりました」 そう返事をしてミニブーケを飾ったワゴンを片付けているとき、一人の客が入ってきた。 「いらっしゃいませ」 優が顔をあげた。 「あんた…」 声が震えた。 会いたくて、会いたくなかった。 すがり付きたくて、突き飛ばしたい。 大好きで愛していた人…。 「優…」 浩一の切羽詰まった表情。 グッと優の腕を引き寄せふらついたところを力一杯抱き締めた。
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

181人が本棚に入れています
本棚に追加