アルデバラン

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目に見えないものが、ずっと怖かった。 なにか、ほんの少しの悪い、罪に似たようなことをすると、何倍も、何十倍にもなって、自分のところに返ってくるんじゃないかと、そう思っていた。 あんなに輝いていたアルデバランは、今日も見えない。 一目、視界に入るだけでその存在に気付けるほどの眩い光だったのに。 でも、存在していない訳じゃない。 この世界の反対側に、アルデバランは今日も輝いて、きっと私に似た誰かを照らしているだろう。 目に見えない悪いものの反対側には、きっと目に見えない素晴らしく良いものも、きっとあるのだろう。 見えないから、ないわけじゃない。 触れないから、いないわけじゃない。 だから、私はまた今日も、踏ん張って笑う。 巡りめぐって。 誰かの手を借りて。 あなたに、全部、届くように。
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