1人が本棚に入れています
本棚に追加
「カズハー!」
よく通る綺麗な声が、背後で私の名前を叫んだ。
振り返ってみると、声に似合った綺麗な顔の友達──瑞希が走り寄ってくる。
「ごめんお待たせ! 何時からいたの?」
「えっと……二十分くらい前かな」
「早っ!」
特に予定も無かったので早く来過ぎてしまった。何かと予定が詰まっている瑞希はバイトで朝早くに出掛けて行ったが、今はバイトもしていない私は着る服をゆっくり吟味しても時間が余る。
「ねぇ………スカート違くない?」
バス停へ向かって歩き出したところで、私を一瞥した瑞希が不機嫌そうな声を上げた。
「いや……あれはさすがに格好良いにも程があるっていうか…」
誘われた時に「何を着て行ったら良いかわからない」と言ったら、瑞希が『飛びっきりのカッコイイ服を用意するわ!』と張りきってくれた。
瑞希の性格と普段着を鑑みずに返事をした私も悪い、しかし用意してくれたのは“本当にカッコイイ”服だったのだから仕方がない。
「えー、なんで変えちゃったの? 靴も違うし」
「だってあのスカートは短すぎるよ。靴も足首を挫きそうなほど高かったから…」
というか実際に履いてみて挫いたし、スカートは穿いてみたら膝上と言っていいのかわからないくらいの丈だった。瑞希が出掛けたあと悩みに悩んだ結果、できるだけ同系色を選んで靴とスカートを変えてきたのだ。
ぶつぶつと言い続けている瑞希を見て見ぬふりして、私は停まっていたバスに乗り込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!