3/10
1242人が本棚に入れています
本棚に追加
/194ページ
一也の名前を、表示して 発信ボタンを押した。 圏外だ… 私は、短いため息をついて、 携帯をポケットへ戻した。 一本道の 向こうから、 こちらに向かってくるバスが、小さく見えた。 (やっときた…) 私は、胸を撫で下ろした。 (行きはよいよい、 帰りは怖い~) 微かに、流れてくるメロディーを、掻き消すように、目の前にバスがとまった。 私は傘を畳み バスに乗り込んだ。 運転手が無言で、 料金箱を指差した。 [大人三十円] 『 三十…円?』 私の声が、聞こえていないのか 運転手は、前をじっと見つめて、微動だにもしない。 諦めて 財布から十円玉を、3枚取り出し、 料金箱に投げ入れた。
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!