1242人が本棚に入れています
本棚に追加
/194ページ
一也の名前を、表示して 発信ボタンを押した。
圏外だ…
私は、短いため息をついて、
携帯をポケットへ戻した。
一本道の 向こうから、
こちらに向かってくるバスが、小さく見えた。
(やっときた…)
私は、胸を撫で下ろした。
(行きはよいよい、
帰りは怖い~)
微かに、流れてくるメロディーを、掻き消すように、目の前にバスがとまった。
私は傘を畳み
バスに乗り込んだ。
運転手が無言で、 料金箱を指差した。
[大人三十円]
『 三十…円?』
私の声が、聞こえていないのか
運転手は、前をじっと見つめて、微動だにもしない。
諦めて
財布から十円玉を、3枚取り出し、
料金箱に投げ入れた。
最初のコメントを投稿しよう!