闇と光

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茶道の稽古が終わったとき 私は、高倉先輩に屋上に呼ばれた。 屋上から見える夕日は、 気味が悪いくらいの赤い色をしていた。 こんな日は思い出してしまう。 あのアパートを。 「桜・・・。俺の言いたいこと分かるよな?」 高倉先輩が何か言っているけど、 その声は遠くに聞こえる。 ここはアパートじゃない。ここは違う! 頭では分かっていても、 必死に言い聞かしても 体が震える・・・。 脳裏に焼きついたあのシーンが 目の前に広がる。 床に広がる赤・・・。 その赤の中心に倒れている首の無い・・・父。 微笑む思いだせない女の人。 赤く染まっている知らない男。 そいつが持っている、 赤い夕日に映える血のついた日本刀。
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