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しばらくすると、
妙子は、庄助の表情に見兼ねてか、
鼻息を労るようにして和らげた。
「庄助さん、
無理なこと言うて、ごめんなさいじゃ。
あたしが、ひかるに言われんことがあるように、
庄助さんにも、あたしらには言われんことがあるとやね。
庄助さん、
あたしは、もぅあんたの事は探らんし、
疑いもせん。
そのかわり……あたしから離れんで。
……庄助さんっ」
庄助は、
そんな妙子を黙って見つめていたが、
卓袱台を勢いよく退かすと、
すり寄って妙子を抱き締めた。
「妙子ぉ……
わては、お前が愛しいっ。
離れとうないっ。
でも堪忍やで……妙子ぉ」
「堪忍て……」
今の妙子には、その言葉の意味はまだ分かってはいなかった。
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