別れの日(昼2)

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´  父と娘は押し黙ったまま歩き続け、 坂道に差し掛かった。  ふたりは立ち止まり汗を拭うと、 鬱蒼とした坂を見上げた。  そのトンネルのような坂の先には、 真っ青な空と、真っ白な雲が鮮やかに映し出された。  父と娘は顔を見合わすとにっこりとして、 また手を繋ぎ、しっかりと歩き出した。  その坂を上がりきろうとする手前で、 真っ青な空の中で風に舞う、 【氷】 と、書かれた小さなのぼりが見えてきた。 「着いたなぁひかるぅ」  父と娘は大きく息を調えながら頷き合うと、 ひかるは駆け出して行き、 食堂の赤茶けたガラス戸に手を掛けた。 ´
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