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薄暗い密林のなかで、その惨劇は行われた。
指揮したのは中根と言う将校で、
満州国の陽春村に於いて、
外れの農民一家に火を放し、虐殺したと言う、噂の持ち主だった。
『お国の為ーーー■命であるーーーーーっ!
■■■■下ぁ~~ 万歳ぃーーーーーっ!
玉砕ーーーー~~~~~っ!』
自決させられた負傷兵は、
率直に自らの命を、絶った訳ではなかった。
銃剣を手にはしたものの、
どう仕様もない哀れな表情を作り、
回りを見て、無言で命を乞うのだったが……。
それには、どうする手立てもなかった。
【生きて虜囚の辱めを受けず。死して罪過の汚名を残すことなかれ】
戦陣訓は、兵隊達を骨の髄まで洗脳していた。
物言わぬ一関を背負って、庄助は歩いた。
自決させられた仲間は三名いた。
他の二名は、
一等兵の二人が背負って、庄助のあとについていた。
そうやって、
生き長らえた仲間は、六名になった。
亡骸を北西の海岸の崖から葬ることを、
庄助らは命じられた。
今、仲間の命を生かすも殺すも、
中根中佐考えひとつにあった。
突然大粒の雨が、
刺すように降ってきて、道は泥濘(ぬか)るんだ。
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