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『一関一等兵……
いや一関はん、軽ぅおますなぁ……
あんたはんの戦争、終わりましたのんやでぇ』
背負う庄助の背中は赤く染まり、
それは雨と共に脚の方へと伝ってゆき、
赤い足跡は広がった。
庄助は立ち止まると、
背負い直し後ろを見た。
あとに続く二人も、同じようにしていたが、
その亡骸に首はなかった。
『わてら……意味も分からんと戦争に取られて、
いったい、何が目的でおましたんやろなぁ』
『玉砕―――っ!
貴様ら~~っ、
何をぐずぐずしておる――っ!』
業を煮やした中根中佐は、
激しく罵倒足蹴して、強引に自決させ、
二人を介錯した。
『終いには……こないな事ぉさせるやなんて
堪忍しとくんなはれや……一関はん』
庄助の、あとに続く二人の一等兵も、
気持ちは同じだった。
三人は、
よろよろとしながら、北西の海岸へと続く、
獣道(けものみち)を歩いて行った。
先の見えぬほどに降っていた雨は、
止んだ。
『ぁあっ………』
庄助は足を滑らせ、体勢を崩した。
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