庄助の場合ー2

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 それを支えた者が居た。 『大丈っごわんか、庄助どん』  菊島伍長だった。 『あ、分隊長殿』  庄助は菊島に支えられながら、 一関を背負い直した。 『庄助さぁ まっこち辛か思いごわしたなぁ』  菊島は、庄助を公の場以外では、 階級では呼ばなかった。 『分隊長どの、わては…… 一関はんを殺してもうたでおますぅ』 『庄助さぁ、 あや(あれは)仕方んねぇこっじゃった。 わいわれ(自分自身)を、そげん(そんなに)責めてはいかんち』  菊島が、階級で呼ばないのには、 庄助に友情を抱いていたからであろう。 『さあ、行っもそ!』  後ろを振り向いて、菊島は叫んだ。  そうしてみんなは、水を得たようにしっかりと踏み出すと、 菊島の背後に並んで、道なき道を進んで行った。  進んで行きながら、 松山一等兵は、菊島が手に持つ麻袋と、麻の包みが気になった。 『分隊長殿~~、分隊長殿が左手に持っておられる麻の包みは、 いったい何ぞなもしぃ?』 『あ、こい(これ)ごわすか』  菊島は歩みを止めると、 上半身を振り向かせて、その麻の包みを高く上げた。 『松山と山川どん、こん中身は、おはん(あなた)達が背負うちょる仏様の、 生の首じゃもんど!』  と言って、悔しい思いをあらわにした。  その上げた麻の包みの周りには、 臭いを嗅ぎ付けた、蝿や得体の知れぬ虫らが集(たか)っていた。  担ぐ三人は、 改めてその様な状態に気づき、 慌てて身体を揺さぶりながら、その虫らを払った。 『ひぇ――っ、 おえんぞなもし―――!』 ´
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