別れの日(昼3、食堂)

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.  そんな父親をちらちら覗きながらも、 ひかるの胸中には、まだ微かな不安が漂っていた。  ひかるは、そんな不安を打ち消すかのように、 「父ちゃん、 あの映画のビラまだ貼ってあるやんか」 と、指した。  父親は指す方に首をひねった。 「そゃなぁ 建さん人気あるさかいにな」  その色褪せたビラは扇風機に煽られて、 時々には、みんなの視線を集めるのだった。 「ひかるぅなんか欲しいモンないか」  ひかるは首を傾げながらも、 「買うてくれるんか?」 と、尋ねた。 「あぁ、何でも言ぅたらええ」  こんどは逸らさない、父親の眼を見た。 「父ちゃん、昨夜(ゆうべ)母ちゃんにぃ」   ゴトッゴトリッ 「はいっ、 冷たいいちご二つ、お待っとうさんや。 ひかるちゃんの、シロップ多めにかけといたさかいにな」  ひかるは父親から眼を離した。 「サンキュー! ねぇちゃん、きっとええお婿さん見つかるで。   痛いっ!」  ひかるはおでこに手をあてた。 .
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