別れの前夜

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´  庄助は、 便所から月を眺めながら、 「……南方で見たお月様は、 もうちょっと大きい気ぃがしましたんやけどなぁ」 と、呟きながら、   パチパチッ と、頬っぺたの蚊を払った。 「なんでぇや。 虫もよう殺せんようなわてを、 何でぇ国は戦争に取らなぁあかんかったんや」  腰を激しく振って、尿を切ると、 庄助は手水(ちょうず)しながら、 思い出したくない出来事を、思い出していた。  それから二三歩足を運ぶと嘔吐を催し、 再び便所へと舞い戻ることになった。 「ぅぅぅ……あの出来事のせいや……ぅぅぅ」  庄助の言うあの出来事とは、 「はぁはぁ……ぅぅぅ わては、……虫も殺せんようなわてが、 人を殺(いさ)めてもうたんや それも、敵国の人やない…… 戦う、同じ日本人をや……ぅぅぅ」  庄助は終戦間近、 二人の同胞を殺害してしまった。  一人は、将校だった。 ´
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