prologue

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        ゴミゴミした街中を抜け小高い丘を目指しひた走ると、視界に入る長い長い階段。多少の立地条件の悪さはあるが、市内を一望できる景色と家賃の低さは最高。 最近じゃ見慣れない【鈴蘭館】というレトロなネーミングはご愛敬。 昔は小洒落た佇(タタズ)まいは、築四十年も経った今じゃ何となく当時の面影を残す程度の古びた外観。 時折、好奇心旺盛な子供たちが探検がてらにやって来ては勝手に驚き「お化け屋敷だぁ」と騒ぎ立てる始末。 気付けばそんな子供の話に尾ひれはひれが付き、今じゃ誰もが知るお化け屋敷。 がしかし、お化け屋敷と称された鈴蘭館には僅ながら住人が住んでいる。 もちろん幽霊ではなく、ちゃんとした人間の住人が‥‥ ちゃんとしたの『ちゃんと』とはちゃんと生きてるという意味で、まともかと聞かれれば曖昧に個性的な面々だとしか答えられない。 他にも安くて綺麗なアパートやマンションがあるにも関わらず、どうして『ここ』なのかという疑問はあるが、人には人に言えない事情があるのでそこは否めない。 飲み屋、社長、サラリーマン、アパレル、霊能者(?)と職業はバラバラ。無口、オカルト、怪力、不眠症、二重人格(!)と多種多様の人種。 そして今日、そんな鈴蘭館に新しい住人を迎える。 【ようこそ鈴蘭館へ】 .
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