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「明奈の事か?」
厚木はやっぱりと呟きまた涙を流す。
「知ってるよ。もう既に・・・」
「どうして?」
市ヶ谷は表情を変えずに厚木を見つめる。
「どうして!・・・どうして!笑っていられるの!」
厚木は涙を隠すことなく泣きじゃくるように市ヶ谷に言葉をぶつける。
「明奈も夢ちゃんも死んじゃってるのに笑えるのよ!」
「・・・なんでかな・・・」
厚木は市ヶ谷の頬に光る物を見つけた。
「泣いてる?」
「厚木・・・俺は素直に泣く事ができないんだよ。教えてくれ俺はどうすれば素直に泣ける!」
市ヶ谷はその場に膝をつく。
「涙は出るんだ・・・ただ心から泣けない!声を枯らす事も!涙を枯らす事も!何も出来ないんだ」
厚木はそんな市ヶ谷を優しく抱きしめて頭を撫でる。
「市ヶ谷が流してる涙は本物でしょう?何も悩む事は無いの」
「厚木・・・!」
今度は市ヶ谷が厚木を押し倒す。
「きゃ!市ヶ谷?」
すると市ヶ谷は厚木の唇を強引に奪う。
そして厚木は市ヶ谷の首に手をかけ、足を絡め市ヶ谷を受け入れるように体の力を抜く。
「市ヶ谷・・・好きにしていいのよ?」
武は1人で廊下を歩いていた。すると前からまりもと夕呼が歩いて来る。
「あら、白銀じゃない?」
「先生にまりもちゃんじゃないですか。何してるんですか?」
「あら~知りたい?」
ちょっと間を置き武は「結構です」と断ると夕呼は面白く無いと言うようにため息をつく。
「なによ。興味無いの?」
「夕呼ぶ先生と絡むといい事少ないんですよ?」
「またまた~嬉しいクセに」
「先生。無理しないでゆっくり休んで下さいよ?」
「何でよ?」
「どうせ先生は純夏の為に連日徹夜なんでしょ?」
「どうして?」
「先生はそいゆう人ですから」
武はそのまま歩いていった。
「バカ・・・」
「おばちゃん。何か軽い物作れますか?」
「軽い物ね・・・握りでもつくろうかい?」
「寿司ですか?」
「握り飯さ!」
「そうですね 」
武と京塚は笑い合った。
「坊主も笑うのか・・・」
別府は酒を口に含んで一気に飲み込む。
「守りたい女ぐらい守れよ」
別府は目を細めて武を見つめた。
「タケルちゃん?」
「純夏・・・飯でもどうだ?」
「うん・・・」
「入っていいか?」
「うん」
純夏はゆっくりと部屋のドアを開き武を招き入れた。
「京塚のおばちゃんが用意してくれたんだ」
武が差し出したおにぎりを手に取り一口食べるとおいしいと言葉を漏らす。
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