第21章 婚約

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第21章 婚約

朝の訓練を終えて武は遅めの朝食を食べに霞と一緒にPXへと来ていた。 「霞。何食べるんだ?」 「一緒がいいです」 「そうか?お前がいいんなら別にいいんだけどな」 武は隣を歩く霞に違和感を感じていた。 いつもよりも何故か近いのだ。 「なぁ、霞。ちょっと歩きづらいんだけど・・・」 武に言われて顔を赤くし霞は武から離れる。 「すいません・・・」 「いいんだけど。霞大丈夫か?」 「えっ?」 「もし疲れた時はちゃんと言ってくれよ?俺がお前を絶対に支えてやるから心配するな」 霞は武の言葉を聞きさらに顔を赤くする。 「シロガネさん・・・」 すると2人を取り囲むように人集りができ、人を掻き分けてまりもが姿を現す。 「まりもちゃん?一緒にメシ食いますか?」 「白銀!いや・・・何と呼べばいいの・・・」 「どうしたんですか?」 まりもはPXに設置してあるモニターを指差す。 武はまりもが指を差したモニターを見ると手に持っていた箸を床に落として空いた口が塞がらなかった。 「はぁ!」 武はPX中に響き渡るほどの声を上げる。 「シロガネさん?」 霞も不思議そうに武を見ながらモニターに目を移す。 「えっ?」 霞もまた驚きで手に持っていたフォークを落とす。 モニターには悠陽の姿が映し出されていた。 「悠陽・・・何言ってんだよ」 『私は将軍というとても責任ある立場であります。今でも世界の何処かで尊い生命が失われているということも、日本が・・・人類が直面している現実も勿論存じております。これは私のわがままかもしれません・・・』 一度顔を下げた悠陽はギュッと手を握り、しっかりと顔を上げると堂々と笑顔で言った。 『私はある男性に想いを抱いております!その方は公家でも武家でもありません。その方は今までに心に大きな傷を負われてしまわれました。それでも笑顔を周囲に向けて下さる優しさや強さ・・・武様の全てが好きなのです。私は武様を愛しております!そして私は武様のと祝言を上げる事を決意致しました。全ての皆様にお許しを頂けるとは思いません。ですが、皆様に人を愛する事は忘れて欲しくはないのです!どうか・・・どうか・・・』 悠陽は大粒の涙を流しながらその場に膝をついた。 モニターに映された悠陽の姿を見て武は冗談ではなく本気なのだと理解するのは容易かった。 「悠陽・・・」 武は悠陽の想いを理解すると同時にこれから起こりうる事がとっさに頭の中に浮かんだ。
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