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武は立ち上がると人を押しどけて走り出した。
すると霞も立ち上がり武を追いかけようとするが人に挟まれて身動きが取れずに手をバタつかせていると霞の手を誰かが握る。
「大丈夫?」
手を掴んだのはまりもであり、霞の手を引っ張っり霞を自分の元へと引き寄せた。
「私も一緒に行ってもいいのかしら?」
まりもの言葉に霞は頷くとまりもと一緒に武のあとを追った。
「大尉!」
若い兵士が血相を変えて部屋へと入ってくる。
「知っている。焦るな」
沙霧尚哉は若い兵士をなだめるように落ち着いた姿を見せる。
「ですが!」
「陛下も何かお考えになられての事なのだろう」
「もしかして我らの計画を!」
「馬鹿者!」
「すいません・・・」
沙霧尚哉の中にも不安はよぎっていた。しかし、不安を抱えているということを悟られないよう沙霧尚哉は平然を装っていた。
(しかし・・・どうして・・・)
「先生!」
「あら?遅かったじゃない」
「何故あんな発表を!」
「何よ。なんで私に聞くのよ」
「でも・・・」
「本人に聞いてくれるかしら?」
武は夕呼の言葉に驚きの表情を見せる。
武のそんな表情を見て夕呼は「ついて来なさい」と言うと部屋を出る。
「先生!」
武も言われるままに夕呼の後について行くことしかできなかった。
すると夕呼が連れてきたのは武の部屋であった。
「はい?」
武はマヌケな声を上げると夕呼の顔を見る。
「あら?どうしたの。バカみたいな声だして」
「だってここ・・・俺の部屋じゃないですか!」
「だからなによ」
「だから何って・・・」
すると武の部屋のドアが開き中から鎧衣が姿を現す。
「おや?シロガネタケル君じゃないか。おめでとうとでも言っておこう」
「課長!どうして!」
「陛下の言葉を聞いていないのかか?」
「聞いたからだよ!クーデターのことは悠陽は心配しなくていいんだよ!」
武の口から出たクーデターという言葉を聞き鎧衣は笑う。
「何がおかしいんですか?」
「失礼。ついおかしくてな」
武の不機嫌そうな顔を見ながらまた言葉を続ける。
「先日も同じ事を言われたよ」
「誰に・・・?」
「一人の恋する乙女にね」
「ウルフ隊長。聞きましたか?」
「さっきな。まさか相手があの天才少年だろ?」
「ウルフ。少年の事を知っているのか?」
「当たり前だろ?あの新型のOSを考えた奴だからな」
「ほう・・・あのOSを・・・」
「しかも結構な腕利きのパイロットらしいしな」
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