幸せに立ち込める暗雲

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私は、三枚の写真を見つめながら、母の病室に行ったのが、本当は誰なのかに思いをめぐらせた。 立川早苗が死んだのが、十五年前。 野沢恵子が死んだのが、十三年前。 田所光江が死んだのが、十一年前。 私のこの記憶に、間違いがあるはずはない。 だったら、母の病室に行ったのは、いったい誰なのか? 十年以上、誰にも蒸し返されることのなかったこの事件の真相を知る誰かが、母の病室に足を運んだのだろうか? だったら、なぜ、わざわざ母のところに? 私は、得体の知れない不安のために、乱れた呼吸を整えられず、ただじっと三枚の写真を見つめた。 母の病室に訪れたのが、本当にこの三人なのか、私は三枚の写真を手に、母に訊いてみたかったが、そんなことはできるはずもなかった。 あの当時、警察は殺されたこの三人の共通点をこう口にしていた。 若い女性であること。 初めに、背中を果物ナイフで刺さてから殺されていること。 そして最後に、この三人の若い女性が、私の夫である山村武士の当時の恋人であったこと。
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